2009年12月12日 09:43
鳩山由紀夫首相は11日夜、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題に関し「日米合意をそのまま、日本政府が『それでいきましょう』と済ますことができれば簡単だ。しかし、現在そのような状況ではない」と述べ、現時点では移設先をキャンプ・シュワブ沿岸部(同県名護市)とした合意の全面履行は困難との考えを明らかにした。首相官邸で記者団に語った。
首相は「新しい政権としてどういう道があるか、それを模索している。沖縄県民の気持ちも理解していく中で、米国にも理解してもらえるような道筋を考えていきたい」と強調。「連立3党の枠組みの中で一生懸命努力をし、解決に向けて政府の方針を決めたい」とも述べた。
これに先立ち、首相は同日午後、岡田克也外相や北沢俊美防衛相を首相官邸に呼び、移設問題への対応を協議。昼には橋本政権などで首相補佐官を務めこの問題に携わった岡本行夫氏とも会い、過去の日米協議や沖縄との折衝の内容などに関して説明を受けた。
沖縄県の米軍普天間飛行場移設問題で、日米合意に基づく同県名護市への現行移設計画の履行を条件に、米側が譲歩案として、日米地位協定に「環境条項」を新たに盛り込むなど、地元の基地負担軽減策を日本側に提示していたことが11日、わかった。
複数の政府関係者が明らかにした。米側が新たな提案をまとめて日本側に働きかけていたことは、現行計画の早期実現に向けた強い意思を示すものといえるが、鳩山政権は応じる姿勢を見せていない。
「環境条項」は、米軍基地内で環境汚染が起きた場合、国や地元自治体による立ち入り調査を認めるもので、米国は、米軍基地を抱えるドイツや韓国とは類似の合意をすでに結んでいる。沖縄県は長年、同条項を日米地位協定に追加するよう求めてきたが、日本政府は運用で対応できるとして、米政府に正式に申し入れたことはなかった。
関係者によると、米側は4日午前、外務省で開いた移設問題をめぐる事務レベル会合で、シファー国防次官補代理、メア国務省日本部長らが日本側に新提案を示した。提案は計3項目で、〈1〉日米地位協定への「環境条項」追加〈2〉普天間飛行場の訓練移転前倒し〈3〉米軍施設に関する米軍と地元自治体との協議機関の創設――が盛り込まれていた。
米側は当初、同日夕に引き続き開いた閣僚級作業部会第2回会合で、岡田外相、北沢防衛相に新提案を示す予定で準備を進めていた。しかし、鳩山首相が現行案に反対する社民党に配慮し、現行案以外の移設案を模索する意向を示したため、米側は正式提示を急きょ見送ったという。
米軍基地内や訓練場で発生する健康被害につながる汚染をめぐっては、現在、両国の合意に基づき、米政府が「直ちに浄化に取り組む」としている。しかし、米側が拒否すれば、日本側は立ち入り調査できないため、沖縄県は調査権限などを明文化するよう求めてきた。米側の新提案は、立ち入り調査を容認する内容となっている。